ただならぬオーラ、妖しい美しさを放つこの塔がおわす所は
近江の東、蒲生町にある阿育王山・石塔寺(いしどうじ)と言うお寺。 この塔に会いたくて会いたくて、はるばるやって来ました。 そして、初めてお会いした瞬間、全身で感じたのが このただならぬ美しさは、いったい何なんだろう・・・と言うこと。 司馬遼太郎氏も、この風景を目の当たりにした思いを著書「歴史を紀行する」の中で 「最後の石段をのぼりきったとき、眼前にひろがった風景のあやしさについては 私は生涯わすれることができないだろう。」と述べています。 また近江と言えば、「近江山河抄」や「かくれ里」を著した 白州正子氏は、「かくれ里」の中で、次のように書いています。 「石塔寺へ最初に行ったのは、ずいぶんの前のことだが、 あの端正な白鳳の塔を見て、私ははじめて石の美しさを知った。 朝鮮にも、似たような塔はあるが、味といい、姿といい、 これは日本のものとしかいいようがなく、 歴史や風土が人間に及ぼす影響を今さらのように痛感した。」 山号にある阿育王(あしょかおう)とは、紀元前3世紀に仏教を広めたインドの王のこと。 平安時代、唐に渡った比叡山の僧が、五台山に滞在中に聞いたのが 「かつて阿育王が仏教隆盛を願い、三千世界に8万4千基もの仏舎利塔を投げた。」 と言う話。そのうちの3基が日本に飛来し、1基は琵琶湖に沈み、1基はこの場所に。 そして面白いのが残りの1基は、なんと、神奈川県の箱根に落ちたと言う説。 箱根のどこかと言うと、塔の沢。 なるほど、塔が落ちた場所なので、塔の沢と言う地名になったと聞けば頷けます。 それを裏付けるものとして、塔の沢には 同じ阿育王山という山号を持つ「阿弥陀寺」という寺が存在しています。 阿弥陀寺のホームページの歴史のサイトを見ると阿育王についての記述が。 そもそも、私がかねてより石塔寺を意識していたのには この話を、今は亡き京都の先生から聞いていたからなのでした。 話は石塔寺に戻して、訪れたのは、とある晩秋の一日。 拝観受付を済ませ、ふと見上げると石塔への石段が 訪れる者を拒むかのように長く続いていますが、石塔に会えるのならばなんのその。 めでたく、初めてのお目もじとなった次第です。 それでは、阿育王塔(あしょかおうとう) 三重石塔とも呼ばれる石塔の全貌をご堪能ください。 まず石塔の全体はと言うと・・・ このように無数の小さな石塔に囲まれた壇上の中央にあるので 近づくことはできません。 ぐるーり、一周・・・ どこから撮っても、堂々たる存在感に圧倒されます。 ですが、もうお気づきのようにこの石塔、阿育王塔としてはいるものの インドっぽいかと言うと、そうではなく 百済や新羅と言った、朝鮮王朝時代の雰囲気が・・・ 一説には、渡来人が故郷を偲んで造ったとするものもあり なるほど、朝鮮半島から渡来した文化や人は、若狭から琵琶湖の湖西を南下し ここにも大勢の渡来人が住んでいたと思われます。 近くには、湖東三山で有名な百済寺(ひゃくさいじ)もあり 湖西にも、朝鮮の部族を表す地名が数多く点在していることからも明らかです。 石塔寺へは本来自力で行く場合は、JR「近江八幡駅」から 近江バス(日野行き) でバス停「桜川駅」で下車、湖国バス(中之郷行き)に乗り換え バス停「石塔口」から徒歩約15分。 もしくは、JR「近江八幡駅」から近江鉄道で「八日市駅」へ。 貴生川(きぶかわ)行きに乗り換え、「桜川駅」で下車、徒歩約30分と 多分丸一日かかっちゃうコース。 なので今回は、いつもお世話になっている nao炬乃座の女将の車で連れて行っていただきました。 女将、いつも快く私の好奇心にお付き合いいただき 誠にありがとうございます。 石塔寺への道すがら、以前一度近くを通り やはりそのただならぬ雰囲気に興味津津だった 「太郎坊」のそばまで行ってもらいました。 これが、地元では勝運の神「太郎坊さん」の名で親しまれている 「太郎坊宮」(たろうぼうのみや)、正式名称は阿賀神社(あがじんじゃ)です。 太郎坊というのは神社を守護している天狗の名。 一説には、鞍馬山に住む天狗、次郎坊に対し、こちらの太郎坊は兄だと言う。 え、では愛宕神社の太郎坊は、何? と、次々疑問が・・・ 分かり次第、加筆したいと思います。 それにしても山全体が無数の巨岩からできているので 全山磐座(いわくら)という異様な光景。 もちろん上っていくこともできますが、今回は石塔寺が目的なのでまたの機会に。 そうそう、この日は晴れたり雨が降ったり、めまぐるしい一日でした。 石塔寺をあとに帰る時には、し、信じられない光景が・・・ なんと、頭上は晴れて西日が照りつけ、周囲の木々はキラキラ輝いているのに 少し向こうの小山の緑を見れば、雪が激しく降っているような・・・ 「女将、あれどう見ても雪が激しく降ってるって感じだよね。」 「あ、ホントだね。」 うう、画像がないのが残念。。。 そして名神高速で、一路京都へ。 途中車窓からは、よく晴れた秋の空に大きな虹が・・・ うう、写真に撮りたかったのですが、しくじりました。 京都に戻って宴会をした際、虹の話をしたら、嵐山にも大きな虹が出たそう。 まぶしいほどの夕日に送られ、近江を後にしたのでしたー。 今回も素晴らしい出会いに感謝です。 余談となりますが、箱根の阿弥陀寺も かつて訪ねたことがあり、私たちを迎い入れてくれたご住職が こんな山寺にはもったいないくらい背が高く 日本人離れした端正なお顔が印象的な方でした。 調べたら、まだご健在で、お、「箱根・阿弥陀寺住職のページ」なんてのがある。 そうそうこのお方。そうそうこのお声。 素晴らしくよく透る、よいお声だったことも、なつかしく思い出されました。 そして阿弥陀寺の縁起、開山は木食遊行僧として知られる弾誓上人で 上人が篭った洞窟が本堂の裏山にあると聞き、ピーンと来たことが・・・ それって、京都は大原の先にある古知谷の阿弥陀寺の縁起と同じじゃーん。 ご住職に尋ねると、朗々としたお声で 「よくご存知で。その寺は当寺と兄弟寺になります。」 おお、つながったー。 今回のお散歩ルートはこちらです。
by ikuranosuke555
| 2011-10-15 09:00
| 近江(2)
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